「子どもがいらない」「かわいそうだ」。この話題では、子どもについてもさまざまなことが語られます。しかし、実際に子どもの側で何が起きているのかは、ほとんど語られません。

この記事は、その部分を扱います。子どもには、生まれてくる経緯を選ぶ余地がありませんでした。そして大人の判断の結果を、そのまま引き受ける立場にあります。何ができるのかを整理します。

💡 先に結論だけ

大人ができる最も重要なことは3つです。①子どもの前で争わない ②生活と態度を急変させない ③将来子どもが自分の出自を知りたいと思ったときに示せる記録を残す。とくに③は、いま決めなければ永久に失われるものです。事実をいつ伝えるかは後から決められますが、伝えられる情報があるかどうかは、いま決まります。

子どもを守るために大人ができる6つ子どもを守るために大人ができる6つ のチェック項目一覧子どもを守るために大人ができる6つ子の前で争わない子に事情を説明させない生活を急変させない態度を急に変えない記録を残しておく相談先を子にも知らせる

子どもは自分のせいだと思う

まず知っておいてほしい、子どもの反応の特徴です。

原因を自分に求めやすい

家庭内で何かが起きているとき、子どもはその原因が自分にあると考えやすいことが知られています。とくに幼い子どもほど、この傾向が強くなります。

説明されないほうが不安になる

何も説明されないと、子どもは断片的な情報から自分なりの説明を作ります。その説明は、たいてい事実より悪いものになります。

態度の変化を敏感に察知する

大人が事実を知った直後、接し方が変わることがあります。子どもはそれを、理由が分からないまま受け取ります。「嫌われた」と解釈することもあります。

責任がないことを明確に伝える

詳しい事情を話さない場合でも、「あなたのせいではない」ということだけは、はっきり伝えてください。これは年齢を問わず必要な言葉です。

大人がやってはいけないこと

実際に起きやすい、避けるべき行動を挙げます。

子どもの前で争う

この問題は、大人の間で強い感情のやりとりを生みます。その場に子どもを置かないでください。聞こえる場所での電話や、隣室での言い争いも含みます。

子どもに事情を説明させる

親族や周囲から、子どもが直接質問される状況を作らないでください。子どもには、説明する責任も義務もありません。

子どもを交渉の材料にする

面会や監護をめぐるやりとりで、子どもを条件として使うことは避けてください。子どもはそれを理解します。

「お前のせいで」と言う

感情が高ぶった場面で出てしまう言葉ですが、これは長く残ります。言ってしまった場合は、後で明確に訂正してください。

子どもの側で起きること子どもの側で起きること を表形式で比較した図子どもの側で起きること起きやすいこと大人にできること自分のせいだと思う責任があると誤解する違うと明確に伝える急に態度が変わる理由が分からず不安になる接し方を急変させない生活環境が変わる転居・転校の負担変化を最小限にする自分の出自が分からな将来知る手がかりがない記録を残しておく誰にも相談できない家庭内で孤立する外部の窓口を知らせる

事実をどう伝えるか

伝えるかどうか、いつ伝えるかは、慎重に判断すべきことです。

いま決めなくてよい

事実関係が整理されていない段階で、子どもに伝える必要はありません。まず大人の側の手続きと生活の見通しを整えてください。

専門家の助言を得る

伝え方については、子どもの年齢や状況によって適切な方法が変わります。自己判断で進めず、専門家に相談してください。

一度に全部を話さない

提供によって生まれた子への告知に関する議論では、幼いうちから年齢に応じて少しずつ伝えていく方法が紹介されています。ある日突然すべてを話すより、負担が小さいとされます。

不意に知ることが最も負担になる

医療の場面、親族の会話、あるいは遺伝子検査。信頼できる人から段階的に伝えられる場合と、偶然や第三者から突然知る場合とでは、受ける影響が大きく異なるとされています。

⚠️ 記録は、いま残すしかない

伝えるかどうかは後から決められます。しかし、伝えられる情報が存在するかどうかは、いま決まります。相手方に関する情報が記録されていなければ、将来子どもがどれだけ知りたいと思っても、示せるものがありません。提供によって生まれた人たちが繰り返し訴えてきたのが、まさにこの点です。誰にも見せない前提でも構いません。書いて残しておいてください。

出自を知るということ

ここは、当サイトが継続して扱ってきた論点と重なります。

知りたいと思う人がいる

自分がどこから来たのかを知りたいという願いは、成長のある時期に強く現れることがあります。これは、親を否定する気持ちとは別のものです。

知る手段は増えている

家庭用の遺伝子検査が普及し、本人が使わなくても親族の利用から判明することがあります。「一生知られない」という前提は、成り立ちにくくなっています。

制度はまだ整っていない

日本では、子どもが自分の出自に関する情報にアクセスする仕組みが、制度として確立していません。だからこそ、当事者が残す記録の意味が大きくなります。

親を否定することにはならない

子どもが出自を知ることと、育ててくれた親との関係は、別のものです。この点を、大人の側が理解しておく必要があります。

子どもへの向き合い方の順序子どもへの向き合い方の順序 の各段階を左から順に示した図子どもへの向き合い方の順序1大人の側を整理す手続きと生活の見通し2専門家に相談する伝え方について助言を得る3年齢に応じて伝え一度に全部ではなく4継続して支える一回で終わらせない

生活を守るということ

感情の面と並んで、生活の安定が重要です。

急変させない

転居、転校、生活水準の急な低下。これらは、子どもにとって事実の内容以上に大きな影響を与えます。手続きを取る場合でも、変化を最小限にする工夫をしてください。

養育費と生活費の見通し

相手からの支払いを前提にした生活設計は危険です。ひとり親家庭を対象とした支援制度を確認してください。児童扶養手当をはじめ、複数の制度があります。

学校への対応

姓が変わる場合など、学校生活に影響が出ることがあります。事前に学校と相談しておくことで、子どもの負担を減らせる場合があります。

相談窓口を確保する

市区町村の子育て支援窓口や、ひとり親家庭向けの相談窓口があります。ひとりで抱えないでください。

子ども自身が相談できる場所

子どもが自分で助けを求められる先を、知らせておいてください。

子どもの人権110番

法務省が設置している相談窓口です。子ども自身が電話で相談でき、無料で利用できます。手紙やインターネットでの相談を受け付けている仕組みもあります。

学校の相談体制

スクールカウンセラーが配置されている学校があります。家庭の事情を、家族以外の大人に話せる場所があることには意味があります。

児童相談所

家庭内で子どもが安全に過ごせない状況がある場合、児童相談所が対応します。虐待が疑われる状況では、ためらわずに連絡してください。子ども自身も相談できます。

知らせておくこと自体が支えになる

実際に使わなくても、「困ったときに相談できる場所がある」と知っていることが、子どもの支えになります。

「子どもがいらない」と感じたとき

この検索でたどり着いた方に向けて、正面から書きます。

その感情自体は起こりうる

事実を知った直後に、これまでと同じ気持ちでいられないことは、異常なことではありません。強い衝撃を受けた状態での反応です。

ただし、行動は別

感情と、実際の行動は分けて扱う必要があります。子どもに対する態度を急に変えることは、子どもに直接の影響を与えます。

時間が経つと変わることがある

判明直後の感情が、その後も続くとは限りません。関係を続けることを選ぶ方もいます。この時期に不可逆的な判断をしないほうがよい、というのが実務上よく言われることです。

ひとりで抱えない

この感情を誰にも話せないまま抱えることは、大きな負担です。弁護士には守秘義務があり、心療内科や相談窓口もあります。話す場所を確保してください。

年齢によって変わること

子どもの年齢は、対応を考えるうえで大きな要素になります。

幼児期

事情を理解することは難しい一方、大人の感情の変化には敏感に反応します。この時期に必要なのは、説明よりも、生活と接し方が安定していることです。抱きしめる、いつもどおり過ごす。それが最も効きます。

学童期

家族の形について、周囲と比べ始める時期です。断片的な情報から自分なりの説明を作りやすく、それはたいてい事実より悪いものになります。年齢に応じた説明を始めることを検討する時期でもあります。

思春期

自分が何者かという問いが強く現れる時期です。この時期に不意に事実を知ると、影響が大きくなるとされています。一方で、自分で調べる力も持ち始めます。伝えるかどうかの判断が、最も難しい時期です。

成人後

すでに関係が築かれている段階での告知は、事実そのものより「なぜ今まで言わなかったのか」という点が焦点になりやすいとされます。伝える場合は、その問いにどう答えるかも考えておく必要があります。

きょうだいがいる場合

見落とされやすい論点です。

扱いの差が伝わる

きょうだいのうち一人だけ事情が異なる場合、大人の接し方の差は、本人にも他のきょうだいにも伝わります。意識していなくても、態度に出ます。

他のきょうだいへの説明

誰に何を伝えるかを、あらかじめ決めておいてください。一人にだけ伝えて口止めをすると、その子に重い負担を負わせることになります。

関係を分断しない

血縁の有無が判明しても、きょうだいとして育ってきた関係そのものは残ります。大人の都合で、その関係を断たないでください。

手続きの影響を確認する

戸籍の記載が変わる場合、きょうだいの姓や記載にも影響が及ぶことがあります。手続きを取る前に、家族全体への影響を弁護士に確認してください。

よくある質問

Q 子どもにいつ伝えるべきですか。

一律の答えはありません。ただし、いくつか言えることがあります。第一に、大人の側の事実関係と生活の見通しが整理される前に伝えるのは避けたほうがよいとされます。子どもが質問しても答えられない状態では、不安を増すだけだからです。第二に、提供によって生まれた子への告知に関する議論では、幼いうちから年齢に応じて少しずつ伝えていく方法が紹介されています。ある日突然すべてを話すより負担が小さいとされます。第三に、不意に知ることが最も影響が大きいという指摘があります。伝え方については、子どもの年齢や状況によって適切な方法が変わるため、専門家に相談してから進めてください。

Q もう子どもに知られてしまいました。

まず、「あなたのせいではない」ということを明確に伝えてください。子どもは家庭内の出来事の原因を自分に求めやすく、とくに幼いほどその傾向があります。詳しい事情を全部話す必要はありませんが、責任がないことだけは言葉にする必要があります。次に、生活と接し方を急変させないでください。事実の内容より、生活の激変や大人の態度の変化のほうが、子どもには大きく響きます。そのうえで、子ども自身が家族以外の大人に話せる場所を用意してください。学校のスクールカウンセラーや、法務省の子どもの人権110番があります。家庭内だけで抱えると、子どもが孤立します。

Q 相手の情報が何も分かりません。

その状態であっても、いま分かっていることを書いて残しておいてください。名前が分からなくても、時期、状況、外見の記憶、どこで出会ったか。断片的な情報でも、将来子どもが知りたいと思ったときの手がかりになります。何も残っていない状態と、断片でも残っている状態とでは、子どもにとっての意味が大きく違います。提供によって生まれた人たちが訴えてきたのは、まさに「何も残されていない」ことのつらさでした。誰にも見せない前提で構いません。記憶が薄れる前に、いま書いてください。これは、いましかできないことです。

Q 子どもへの気持ちが以前のように戻りません。

強い衝撃を受けたあとに、以前と同じ気持ちでいられないことは、異常なことではありません。その感情を否定する必要はありませんし、無理に打ち消そうとしても難しいものです。大切なのは、感情と行動を分けることです。気持ちが揺れていても、子どもへの接し方を急変させないこと、生活を守ること。ここは行動として選べます。そして、判明直後の感情がその後も続くとは限りません。時間をかけて関係を続けることを選ぶ方もいます。この時期に不可逆的な判断をしないほうがよい、とよく言われるのはそのためです。ひとりで抱えず、心療内科や相談窓口を使ってください。

まとめ|いま決まるのは、記録だけ

子どもには、生まれてくる経緯を選ぶ余地がありませんでした。そして、家庭内で起きていることの原因を、自分に求めやすい立場にあります。詳しい事情を話さない場合でも、「あなたのせいではない」ということだけは伝えてください。

大人ができることは、大きく3つです。子どもの前で争わないこと。生活と態度を急変させないこと。そして、将来子どもが自分の出自を知りたいと思ったときに示せる記録を残すこと。

このうち、いま決まってしまうのは3つ目だけです。伝えるかどうかは後から決められますが、伝えられる情報が存在するかどうかは、いま決まります。断片的でも構いません。記憶が薄れる前に、書いて残しておいてください。それが、いまできる数少ないことです。