ひとり親を対象とした支援制度は、思っている以上に数があります。しかし共通しているのは、どれも申請しなければ受けられないということです。役所が自動的に振り込んでくれるものではありません。制度を知らなかったために、受け取れたはずのお金を逃している方は少なくありません。
この記事では、ひとり親が使える経済的な支援を「もらえるお金」と「安くなるお金」に分けて一覧にします。金額や所得の基準は年度ごとに改定されるため、最新の数字は必ずお住まいの自治体とこども家庭庁のページでご確認ください。
柱は2つです。児童手当は婚姻の有無を問わず、子どもがいる全世帯が対象になります。児童扶養手当はひとり親家庭を対象とした制度で、未婚のひとり親も含まれます。この2つに加えて、医療費の助成、保育料の軽減、税の控除、公共料金の減免などが重なります。
支援は「もらえるお金」と「安くなるお金」に分かれる
制度の数が多くて混乱しやすいので、まず2つに分けて整理します。
もらえるお金(現金が振り込まれる)
児童手当、児童扶養手当、出産育児一時金、出産手当金、自治体独自の給付金などがこれにあたります。指定した口座に振り込まれる形です。
安くなるお金(負担が減る)
医療費の助成、保育料の軽減、税の控除、水道料金や交通機関の割引などです。現金は入ってきませんが、支出が減るぶん、実質的な効果は同じです。こちらのほうが見落とされやすいので、意識して確認してください。
児童手当|婚姻の有無を問わず対象
子どもを育てているすべての世帯が対象になる制度です。ひとり親向けの制度ではありませんが、当然に対象になります。
2024年10月から大きく拡充された
制度が見直され、次の点が変わりました。
- 所得制限が撤廃された ── 保護者の所得にかかわらず支給される
- 対象年齢が高校生年代まで広がった ── 従来は中学生までだった
- 第3子以降の支給額が引き上げられた ── 高校生年代まで一律で月3万円
支給額の目安は、3歳未満が月15,000円、3歳から高校生年代までが月10,000円、第3子以降は年齢にかかわらず月30,000円です。支給は年に数回に分けて、まとめて振り込まれます。
児童手当は、申請した月の翌月分から支給されるのが原則です。さかのぼって受け取ることはできません。出生届と同じ日に申請するのが基本だと考えてください。1か月遅れると、その分は受け取れません。
児童扶養手当|ひとり親家庭の柱
ひとり親家庭の生活の安定を目的とした手当で、未婚のひとり親も対象です。
金額の目安
所得によって、全部支給・一部支給・支給停止に分かれます。令和7年度の例では、全部支給の場合、子ども1人で月45,500円程度、2人目以降は加算額が上乗せされます。第3子以降の加算額は、第2子と同額まで引き上げられました。
金額は毎年度、物価の動向を踏まえて改定されます。この記事の数字は目安として読み、実際の金額は自治体でご確認ください。
所得による制限がある
受給資格者本人の前年の所得によって、全部支給か一部支給かが判定されます。この限度額も引き上げが行われており、令和6年11月分からは、子ども1人の場合で全部支給の限度額が190万円に、一部支給の限度額が385万円に引き上げられました。
申請には書類がそろう必要がある
戸籍謄本、住民票、預金通帳、マイナンバーが分かるものなどが必要です。児童手当と違って窓口が別の課になっていることも多く、出生届の日にまとめて済ませられない場合があります。先に必要書類を確認しておくことをおすすめします。
医療費の助成|2つの制度がある
医療費に関する助成には、性格の違う2つの制度があります。混同されがちなので分けて説明します。
子ども医療費助成(乳幼児医療費助成)
子どもの医療費の自己負担を軽減する制度です。ひとり親かどうかに関係なく、多くの自治体が実施しています。対象年齢や助成の範囲、所得制限の有無は自治体によって大きく異なります。
ひとり親家庭等医療費助成
こちらはひとり親家庭を対象とした制度で、子どもだけでなく親自身の医療費も対象になる点が特徴です。自分が体調を崩したときの負担が減るという意味で、実は生活への影響が大きい制度です。
所得制限があり、名称も自治体によって異なります。「母子家庭等医療費助成」といった名前で案内されていることもあります。
保育料の軽減
保育所などの利用料は、世帯の所得に応じて決まります。ひとり親世帯については、軽減の措置が設けられているのが一般的です。
また、3歳から5歳までの子どもの保育料については、幼児教育・保育の無償化により、多くの世帯で無償となっています。0歳から2歳までについては、住民税が非課税の世帯を対象とした無償化が行われています。
お住まいの自治体の子育て支援制度のページで、ひとり親世帯に対する軽減の有無と内容を確認してください。
税金が安くなる|ひとり親控除
見落とされやすいのが、税制上の優遇です。
未婚のひとり親も対象になる
かつては、婚姻を経験したことがあるかどうかで扱いに差がありました。現在は「ひとり親控除」として整理され、未婚のひとり親も対象になっています。
所得税と住民税の両方に効く
所得から一定額を差し引ける制度で、所得税と住民税の両方が軽くなります。会社にお勤めの方は年末調整で、それ以外の方は確定申告で手続きします。
申告しないと適用されない
この控除も、自分から申告しなければ適用されません。年末調整の書類に該当する欄がありますので、記入漏れがないか確認してください。過去の分についても、あとから修正して還付を受けられる場合があります。
見落とされやすい減免・割引
手当や医療費以外にも、負担が減る制度があります。自治体や事業者によって内容が違うため、お住まいの地域で確認が必要です。
- 水道料金・下水道料金の減免 ── 児童扶養手当の受給者を対象としている自治体があります
- 交通機関の割引 ── 通勤定期の割引制度が設けられている場合があります
- 粗大ごみ手数料の減免 ── 自治体独自の制度として実施されていることがあります
- 公営住宅の優先入居 ── ひとり親世帯を優遇する仕組みがあります
- 就学援助 ── 学用品費や給食費などの補助を受けられる場合があります
- 高等学校等就学支援金 ── 授業料の負担を軽減する制度です
これらは「ひとり親だから自動的に適用される」ものではありません。多くが児童扶養手当の受給を条件としており、まず児童扶養手当の手続きを済ませることが、他の制度への入り口になります。
出産のときに受け取れるお金
妊娠・出産の時期にも、受け取れるお金があります。
出産育児一時金
健康保険から支給される制度で、出産にかかる費用の負担を軽減します。多くの場合、医療機関に直接支払われる仕組みを利用できます。
出産手当金
勤務先の健康保険に加入している方が、産休を取得して給与が支払われない期間について受け取れるものです。国民健康保険の場合は対象になりません。
育児休業給付金
雇用保険から支給されるもので、育休中の収入を支える制度です。婚姻の有無は関係ありません。受給には勤務期間などの要件があります。
妊婦・子育て応援の給付
妊娠の届出時と出生の届出時に給付を行う仕組みが設けられています。名称や運用は自治体によって異なるため、妊娠届を出すときに窓口で確認してください。
申請の順番とコツ
制度が多いので、順番を決めて動くと漏れません。
ステップ1|出生届と同時に
児童手当と子ども医療費助成は、出生届と同じ日に申請するのが基本です。児童手当は申請した翌月分からの支給になるため、遅れると損をします。
ステップ2|できるだけ早く
健康保険への加入と、児童扶養手当の申請です。児童扶養手当は書類が多いため、妊娠中に必要書類を確認しておくと動きやすくなります。
ステップ3|児童扶養手当の証書が届いてから
ひとり親家庭等医療費助成や、水道料金の減免といった制度は、児童扶養手当の受給が条件になっていることがあります。証書が届いたら、そのコピーを持って各窓口を回ってください。
ステップ4|年末調整・確定申告
ひとり親控除の申告です。忘れやすいので、カレンダーに入れておくことをおすすめします。
自治体の窓口で「ひとり親で子育てをすることになりました。使える制度をすべて教えてください」と尋ねることです。担当課をまたぐ制度を一覧で案内してくれる自治体も多くあります。ひとり親家庭を対象とした相談員が配置されている自治体もあり、制度を横断して案内してもらえるのが最大の利点です。
よくある質問
受けられます。児童扶養手当は、父母の離婚や死別だけでなく、父が生死不明である場合、そして婚姻によらずに生まれた子を養育している場合も対象としています。未婚であることを理由に対象外とされることはありません。ただし、所得による制限があること、そして生計を同じくする同居の親族の所得も判定に影響する場合があることには注意が必要です。実家で親と同居している場合、世帯の状況によって支給額が変わる、あるいは支給されないことがあります。同居を検討している場合は、事前に窓口で確認してください。
制度によって扱いが違います。児童手当は原則として申請した月の翌月分からの支給で、さかのぼって受け取ることはできません。児童扶養手当も同様に、申請した月の翌月分からが基本です。一方、税の控除については、申告し忘れた年の分をあとから手続きして還付を受けられる場合があります。医療費の助成も、いったん自己負担した分をあとから申請できる仕組みを設けている自治体があります。「もう遅い」と諦める前に、それぞれの窓口で確認してみてください。
児童扶養手当には所得による制限があり、収入が増えると支給額が減ります。ただし、収入の増加分がそのまま手当の減少で相殺されるような設計にはなっていません。一部支給の仕組みは、所得が増えるにつれて手当が段階的に減る形になっており、働くことが不利にならないよう配慮されています。また、所得の判定には各種の控除が適用されるため、額面の収入がそのまま判定額になるわけでもありません。判断に迷う場合は、自治体の窓口で具体的な収入額を伝えて試算してもらうのが確実です。
全国共通の制度については、こども家庭庁のウェブサイトが最も確実です。児童手当、児童扶養手当については、制度の概要と最新の金額が公開されています。一方、医療費の助成、保育料の軽減、水道料金の減免といった制度は自治体ごとに内容が異なるため、お住まいの市区町村のサイトで確認する必要があります。多くの自治体が「ひとり親家庭のみなさまへ」といった案内ページを設けており、そこに使える制度が一覧でまとまっています。この記事の末尾に、こども家庭庁のページへのリンクを出典として掲載しています。
まとめ|申請しなければ、制度は動かない
ひとり親が使える支援は、「もらえるお金」と「安くなるお金」に分けて整理すると全体像がつかめます。柱になるのは児童手当と児童扶養手当。そこに医療費の助成、保育料の軽減、税の控除、各種の減免が重なります。
すべてに共通するのは、申請しなければ受けられないということです。とくに児童手当は、申請した月の翌月分からの支給になるため、出生届と同時に手続きするのが基本になります。
そして、児童扶養手当の受給を条件とする制度が多くあります。まず児童扶養手当の手続きを済ませ、証書が届いたらそれを持って各窓口を回る。この順番が、いちばん漏れの少ない進め方です。迷ったら、自治体の窓口で「使える制度をすべて教えてほしい」と尋ねてください。それがもっとも確実です。