「ひとり親だと保育園に入りにくいのでは」と心配される方がいますが、実際は逆です。保育園の入園は、各自治体が行う利用調整という点数付けで決まり、この仕組みのなかでひとり親世帯は加点される扱いになっているのが一般的です。
とはいえ、加点があるから必ず入れるわけでもありません。地域の状況によっては、加点があっても希望する園に入れないことがあります。だからこそ、点数の仕組みを理解して、できる準備を先にしておくことに意味があります。
入園の可否は「基準指数」と「調整指数」の合計で決まります。基準指数は保護者の就労状況などから計算され、調整指数は世帯の事情に応じた加点・減点です。ひとり親世帯は調整指数で加点されるのが一般的で、同じ指数の世帯が並んだときの優先順位でも上位に置かれることが多くあります。
利用調整という仕組み
認可保育所などの利用は、先着順でも抽選でもありません。各自治体が、保育の必要性の高さを点数化して順位をつけ、定員に応じて割り振ります。これを利用調整と呼びます。
点数は2つの部分でできている
ひとつは基準指数です。保護者の就労時間や日数、健康状態、介護の有無などから計算されます。もうひとつが調整指数で、世帯の個別の事情に応じて加点や減点が行われます。この2つを合計したものが、その世帯の指数になります。
ふたり親世帯との比較で考える
ふたり親世帯の場合、両親それぞれの基準指数を計算して合算します。ひとり親世帯では1人分になるため、基準指数だけを見ると不利に見えます。しかしその分を補うのが調整指数の加点です。
ひとり親世帯への加点
ひとり親であることは、調整指数の加点項目として扱われます。
加点の考え方
ある自治体の例では、ひとり親で他に同居人がいない場合に調整指数が加点されます。また、父または母が不明である場合など、より保育の必要性が高いと判断される事情については、大きな加点が行われることもあります。
加点の幅は自治体によってまったく異なります。お住まいの自治体の点数表を必ず確認してください。多くの自治体が、保育課のページで点数表を公開しています。
同居人がいると扱いが変わることがある
注意していただきたいのが、実家などで親と同居している場合です。同居している祖父母が保育にあたれる状況にあると判断されると、加点が減る、あるいは減点される場合があります。
これは「実家に頼れるなら保育の必要性が下がる」という考え方によるものです。産後の生活を考えると実家の支援は大きな助けになりますが、保育園の入園という観点では不利に働くことがあるという点は知っておいてください。
実家に戻るかどうかは、児童扶養手当の支給額にも、保育園の点数にも影響します。どちらも世帯の状況を見て判断されるためです。同居を決める前に、両方の窓口で影響を確認しておくことをおすすめします。
基準指数を上げるには
調整指数は自分では動かせませんが、基準指数は働き方によって変わります。
就労時間と日数が基本
多くの自治体で、月あたりの就労時間や1日の勤務時間、週の勤務日数によって指数が決まります。フルタイムで働いている場合がもっとも高く、時短勤務やパートでは低くなるのが一般的です。
復職の予定でも申し込める
育休中で、復職を予定している場合も申し込めます。この場合、復職後の勤務条件で判定されるのが通常です。就労証明書には、復職予定日と復職後の勤務条件を記入してもらいます。
就労証明書は早めに依頼する
勤務先に作成してもらう書類ですが、依頼から受け取りまでに時間がかかることがあります。申込の締切に間に合わないと、それだけで申請できません。募集要項が公表されたらすぐ依頼するくらいの余裕を持ってください。
申込前にできる準備
点数の仕組みは変えられませんが、準備で結果が変わる部分はあります。
1. 自分の指数を計算しておく
自治体が公開している点数表を使って、自分の指数を計算してみてください。前年度にどのくらいの指数で内定が出たかを公表している自治体もあり、それと比べれば見通しが立ちます。
2. 希望する園をすべて書く
希望する園を絞りすぎると、内定の可能性が下がります。通える範囲の園はすべて見学し、順位をつけて書いてください。「第一希望しか書かない」というのは、もっとも避けたい選択です。
3. 保留になった場合の選択肢を持っておく
認可保育所に入れなかった場合に備えて、認可外の保育施設、一時保育、企業主導型の保育施設などを調べておいてください。認可外を利用しながら次の申込に臨むと、加点の対象になる自治体もあります。
4. 転居の予定は先に済ませる
申込は原則として、住んでいる自治体で行います。転居を予定している場合、申込のタイミングと転居の時期の関係を確認してください。自治体をまたぐと、点数表も待機の状況も変わります。
園を選ぶときに見るところ
点数の話ばかりになりがちですが、どの園を希望するかも重要です。ひとり親の場合、とくに次の3点が生活の負担を左右します。
1. 動線が成り立つか
自宅、保育園、職場の位置関係が、毎日の負担を決めます。とくに送迎の時間帯に、その経路が現実的に通れるかを確認してください。地図上では近くても、交通の便が悪ければ毎日の負担は大きくなります。可能であれば、実際に通勤の時間帯に歩いてみることをおすすめします。
2. 開所時間と延長保育
ひとり親の場合、お迎えを代わってもらえる人がいないことが多くあります。勤務時間に対して開所時間が足りているか、延長保育があるか、延長の申込方法と料金はどうなっているかを確認してください。この確認を怠ると、入園してから働き方の調整に追われることになります。
3. 保護者が関わる行事や当番の量
園によって、保護者が参加する行事や当番、持ち物の準備の量が大きく違います。手作りの用意を求められる園もあります。一人で仕事と育児を回す前提で、無理なく続けられる水準かどうかを見学のときに確認してください。「ひとり親でも大丈夫でしょうか」と率直に尋ねてみると、園の姿勢も分かります。
見学は必ず行く
ウェブサイトや口コミだけでは分からないことが多くあります。見学に行くと、園の雰囲気、職員の様子、施設の状態が分かります。見学の申込は先着になることもあるため、募集要項が出る前から動き始めて構いません。
年間のスケジュール
4月入園を目指す場合の一般的な流れです。自治体によって時期が異なるため、必ず募集要項でご確認ください。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 夏から秋 | 募集要項の公表、園の見学 |
| 秋 | 就労証明書の依頼、申込書類の準備 |
| 秋から初冬 | 申込の受付(締切は厳守) |
| 冬 | 利用調整・選考 |
| 1月から2月ごろ | 結果の通知 |
| 2月から3月 | 面接・健康診断、二次募集への対応 |
| 4月 | 入園、慣らし保育 |
途中入園を希望する場合は、毎月の申込と調整が行われます。ただし、年度途中の空きは限られるため、4月入園のほうが可能性は高くなります。
慣らし保育の期間を見込んでおく
見落とされやすいのが、入園直後の慣らし保育です。最初の1週間から2週間ほどは、短時間から少しずつ保育時間を延ばしていく期間が設けられます。
この期間は、通常より早いお迎えが必要になります。ひとり親の場合、代わりに迎えに行ける人がいないことも多いため、復職の日を慣らし保育の終了後に設定するか、勤務先に事情を伝えて調整しておく必要があります。
また、入園直後は子どもが体調を崩しやすい時期でもあります。発熱で呼び出される日が続くこともあります。この時期をどう乗り切るかは、事前に考えておくべき課題です。病児保育やファミリーサポートの登録を、入園前に済ませておくと安心です。
保育料はいくらかかるか
保育料は、世帯の所得に応じて決まります。ひとり親世帯には軽減の措置が設けられているのが一般的です。
また、3歳から5歳までの子どもについては、幼児教育・保育の無償化により多くの世帯で利用料が無償になっています。0歳から2歳までについては、住民税が非課税の世帯を対象とした無償化が行われています。
ただし、無償化の対象になるのは利用料であり、給食費の一部や、行事費、通園にかかる費用は別途負担が生じることがあります。この部分についても、ひとり親世帯を対象とした免除の仕組みが設けられている場合があります。入園が決まったら確認してください。
よくある質問
なります。利用調整で見られるのは、保育を必要とする状況にあるかどうかであり、ひとり親になった経緯は問われません。離婚でも死別でも未婚でも、扱いは同じです。申込の際に、経緯を詳しく説明する必要もありません。書類の上では、戸籍や住民票からひとり親であることが確認されます。ただし、同居している親族がいる場合には、その方が保育にあたれるかどうかが確認されることがあります。この点は経緯にかかわらず共通です。
求職中という状態でも申し込める自治体が多くあります。ただし、就労している場合に比べて指数は低くなるのが一般的です。また、入園後に一定期間内に就労を開始しないと、退園となる扱いを設けている自治体もあります。ひとり親で求職中の場合は、就労支援の窓口とあわせて相談してください。ひとり親家庭を対象とした就業・自立支援の事業があり、就職に向けた相談や資格取得の支援を受けられます。保育の申込と就労の準備を並行して進めるのが現実的です。
まず、二次募集や年度途中の申込に備えて、申込の意思を継続する手続きをしてください。自治体によって手続きの方法が違います。そのうえで、認可外の保育施設、一時保育、企業主導型の保育施設などを検討します。認可外を利用していることが次回の申込で加点される自治体もあるため、窓口で確認してください。また、保留の通知は育児休業の延長を申請する際にも必要になります。勤務先に事情を伝えて、育休の延長が可能かどうかを早めに相談しておくことをおすすめします。
点数表を公開していない自治体や、ランク分けの形でしか公開していない自治体もあります。その場合は、保育課の窓口に直接問い合わせてください。「自分の状況だとどのくらいの位置になるか」を尋ねれば、目安を教えてもらえることがあります。また、募集要項のなかに利用調整の考え方が説明されていることも多いので、そちらも確認してください。窓口で相談するときは、就労の状況、同居している家族の有無、希望する地域を具体的に伝えると、より実情に近い見通しが得られます。
いくつもあります。まず、お住まいの自治体の点数表と前年度の内定状況を確認して、見通しを立てておくこと。次に、通える範囲の園を調べて一覧にしておくこと。園によっては妊娠中でも見学を受け入れています。さらに、勤務先に復職の時期と勤務条件について相談を始めておくこと。就労証明書の記載内容が指数に直結するため、勤務条件が確定していると計算しやすくなります。そして、病児保育やファミリーサポートといった、入園後に必要になるサービスの登録要件を調べておくこと。産後は動けなくなるため、動けるうちに情報だけでも集めておくと違います。
不安になるのは当然です。ひとりで送迎と仕事を回すのは、実際に負担の大きいことです。ただ、多くの方が工夫しながら続けています。鍵になるのは、自分ひとりで抱えない仕組みを先に作っておくことです。病児保育の登録、ファミリーサポートの利用、延長保育の確保、勤務先への事情の共有。これらを入園前に整えておくと、いざというときに選択肢があります。また、就労の条件そのものを見直すことも選択肢です。ひとり親家庭を対象とした就業・自立支援の相談窓口があり、働き方について具体的に相談できます。ひとりで判断せず、使える窓口を頼ってください。
まとめ|ひとり親は不利ではない、ただし準備は必要
保育園の入園は、基準指数と調整指数の合計で決まる利用調整という仕組みで判定されます。ひとり親世帯は調整指数で加点されるのが一般的で、同じ指数の世帯が並んだときの優先順位でも上位に置かれることが多くあります。ひとり親であることが不利に働く制度設計にはなっていません。
ただし、加点があれば必ず入れるというものでもありません。準備でできることは3つ。自治体の点数表で自分の指数を計算しておくこと、通える範囲の園をすべて希望に書くこと、保留になった場合の選択肢を持っておくこと。
そして、実家との同居は児童扶養手当にも保育園の点数にも影響します。同居を決める前に、両方の窓口で確認しておいてください。入園後の慣らし保育や急な発熱への備えも、復職前に段取りしておくと安心です。