妊活を始めると、まず勧められるのが葉酸です。ただ、「いつから」「どれだけ」「食事とサプリメントのどちらで」という肝心な部分が、情報源によってばらばらに書かれています。

この記事では、国が定めている食事摂取基準にもとづいて、数値をはっきり示します。感覚ではなく基準で判断してください。そのほうが、摂りすぎも摂らなすぎも防げます。

💡 先に結論だけ

日本人の食事摂取基準では、妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦は、通常の食品以外の食品(サプリメントなど)から1日400マイクログラムの葉酸を摂ることが望まれるとされています。食事からの推奨量は15歳以降で男女とも1日240マイクログラムです。つまり食事に加えて、サプリメントで400マイクログラムという考え方になります。

葉酸の摂取量の目安葉酸の摂取量の目安 を表形式で比較した図葉酸の摂取量の目安数値出どころ15歳以降の推奨量(食事から)男女とも1日240マイクログラム日本人の食事摂取基準妊娠を計画している女性等通常の食品以外から1日400マイクログラム同上妊婦の付加量(中期・後期)1日240マイクログラム同上耐容上限量(30〜64歳1日1,000マイクログラム同上耐容上限量(その他の年齢)1日900マイクログラム同上

なぜ葉酸が勧められるのか

葉酸は、体内で細胞が新しく作られるときに必要になる栄養素です。妊娠の初期は、胎児の細胞が急速に増える時期にあたります。

神経管閉鎖障害のリスク低減

食事摂取基準では、胎児の神経管閉鎖障害のリスクを低減するために、妊娠を計画している女性などがサプリメントなどから葉酸を摂ることが望まれるとされています。これが、妊活の段階から葉酸が勧められる理由です。

妊娠が分かってからでは遅い場合がある

この時期は妊娠のごく初期にあたります。妊娠に気づくころには、すでにその時期を過ぎていることがあります。だからこそ、妊娠してから飲み始めるのではなく、妊娠を考え始めた段階から摂ることが勧められています。

ただし「飲めば必ず防げる」ものではない

基準に書かれているのは「リスクの低減」です。摂取していれば必ず防げるという意味ではありません。過度な期待も、逆に飲まなかったことへの過度な自責も、どちらも適切ではありません。

どれだけ摂るか

数値を整理します。単位はマイクログラムです。

食事からの推奨量は1日240マイクログラム

15歳以降であれば、男女とも1日240マイクログラムが推奨量とされています。これは日常の食事で目指す量です。

サプリメントなどから400マイクログラム

妊娠を計画している女性、妊娠の可能性がある女性、妊娠初期の妊婦については、これに加えて、通常の食品以外の食品から1日400マイクログラムを摂ることが望まれるとされています。

妊娠中期以降は付加量として240マイクログラム

妊娠中期および後期については、通常の推奨量に加えて1日240マイクログラムを付加するという考え方が示されています。

⚠️ 上限もある

葉酸には耐容上限量が定められています。サプリメントなどに含まれる葉酸について、30歳から64歳では1日1,000マイクログラム、その他の年齢区分では1日900マイクログラムとされています。複数のサプリメントを重ねて飲んでいると、気づかないうちに近づくことがあります。成分表示を確認して、合計量を把握してください。

いつから、いつまで

タイミングの目安です。

始めるのは「妊娠を考えたとき」

妊娠が分かってからでは、もっとも必要とされる時期を過ぎている可能性があります。妊活を始めようと思った時点から摂り始めるのが基本です。

妊娠の可能性がある期間は継続する

いつ妊娠するかは分かりません。したがって、妊娠を目指している期間は継続して摂ることになります。

妊娠中期以降の扱い

妊娠初期を過ぎると、サプリメントからの400マイクログラムという考え方ではなく、食事からの付加量という考え方に変わります。ただし、実際に何をどう続けるかは、妊娠が分かった時点で医師に確認してください。

食事から摂れる量

サプリメントの話ばかりになりがちですが、食事からの葉酸も重要です。

葉酸を多く含む食品

葉酸は、その名のとおり葉物の野菜に多く含まれます。ほうれん草、ブロッコリー、アスパラガス、枝豆。また、レバー、納豆、いちごなどにも含まれます。

加熱と水に弱い

葉酸は熱に弱く、水に溶け出しやすい性質があります。長時間ゆでると、かなりの量が失われます。蒸す、電子レンジで加熱する、汁ごと食べるといった調理法のほうが残りやすくなります。

それでもサプリメントが勧められる理由

食事から400マイクログラムを上乗せするのは、現実的に簡単ではありません。また、食品に含まれる葉酸は、サプリメントに含まれる形のものと比べて体内での利用効率が異なるとされています。だからこそ、基準では「通常の食品以外の食品から」と指定されているのです。

いつから始めるかいつから始めるか の各段階を左から順に示した図いつから始めるか1妊娠を考え始めたこの時点から摂り始めるのが基本2妊娠の可能性がある期間継続して摂る3妊娠初期もっとも重要とされる時期4妊娠中期以降食事からの付加量が中心になる

サプリメントの選び方

種類が多く、価格の幅も大きいため、迷いやすいところです。

1日あたりの葉酸量を確認する

まずここです。パッケージに「1日〇粒あたり葉酸〇マイクログラム」と書かれています。400マイクログラムを目安に選んでください。これを大きく超える製品を選ぶ必要はありません。

他の成分も確認する

妊活向けのサプリメントには、鉄やビタミン類など複数の成分が含まれていることがあります。それ自体は問題ありませんが、他のサプリメントと併用すると、特定の成分を摂りすぎることがあります。重ねて飲む場合は、両方の成分表示を確認してください。

価格の高さと効果は比例しない

高価な製品のほうが優れているとは限りません。含まれる葉酸の量が基準に沿っていること、成分表示が明確であることのほうが重要です。

続けられる形を選ぶ

粒が大きくて飲みにくい、1日に何粒も飲む必要がある。こうした製品は続きません。飲み続けられるかどうかも、選ぶ基準に入れてください。

注意しておきたいこと

サプリメントは食品ですが、無条件に安全というわけではありません。

薬を飲んでいる場合は相談する

持病があって薬を服用している場合、サプリメントとの組み合わせに注意が必要なことがあります。受診の際に、飲んでいるサプリメントを伝えてください。

複数を重ねない

「妊活用」「美容用」「鉄分補給用」と複数を飲んでいると、同じ成分が重複します。とくに脂溶性のビタミンなど、摂りすぎに注意が必要な成分もあります。

食事の代わりにはならない

サプリメントはあくまで補助です。食事を抜いてサプリメントで補うという使い方は、本末転倒です。

体調に変化があれば中止して相談する

サプリメントを飲み始めてから、胃の不快感や発疹などの変化があった場合は、いったん中止して医師や薬剤師に相談してください。食品だからといって、誰にでも合うわけではありません。

効果をうたう表示に注意する

「妊娠しやすくなる」といった表現には根拠を確認してください。葉酸について公的に示されているのは、神経管閉鎖障害のリスク低減に関する内容です。それ以上の効果を約束する説明には慎重になってください。

サプリメントを選ぶときの6項目サプリメントを選ぶときの6項目 のチェック項目一覧サプリメントを選ぶときの6項目1日あたりの葉酸の量が明記されているか400マイクログラムを大きく超えていないか他の成分の量も確認したか複数のサプリメントを重ねていないか医薬品を服用中なら医師に相談したか食事の代わりにしていないか

葉酸以外に気にすべき栄養素

葉酸ばかりが注目されますが、他にも意識しておきたいものがあります。ただし、いずれもまず食事からが原則です。

月経のある女性は、鉄が不足しやすい状態にあります。不足すると疲れやすさやだるさにつながります。妊娠すると必要量はさらに増えます。ただし、鉄は摂りすぎにも注意が必要な成分です。不足が心配なら、自己判断でサプリメントを増やす前に血液検査で確認してください。

カルシウム

日本人に不足しがちな栄養素として、繰り返し指摘されています。乳製品、小魚、大豆製品などから摂ることになります。

ビタミンD

食品から摂るほか、日光を浴びることでも体内で作られます。日中ほとんど屋外に出ない生活が続いている方は、意識しておく価値があります。

たんぱく質

極端な食事制限をしていると不足しがちです。体をつくる基本になる栄養素ですので、主菜を毎食そろえることを意識してください。

これらを個別にサプリメントでそろえようとすると、成分が重複しやすくなります。まず食事を整え、それでも不足が気になる項目について受診時に相談するという順番が安全です。

提供者側の栄養は関係するか

葉酸は女性向けに語られることが多いのですが、精子を提供する側の栄養状態も無関係ではありません。

ただし、精子提供という文脈では、提供者の生活習慣に踏み込んで指示することは現実的ではありません。確認できるのは、感染症検査の結果と精液検査の結果です。栄養状態を直接確かめる手段はありません。

提供者に協力を求めるとすれば、極端な生活の乱れがないか、直近の体調はどうかを尋ねる程度が現実的な範囲になります。

よくある質問

Q 葉酸を摂り忘れた日があると、意味がなくなりますか?

1日忘れたからといって意味がなくなるものではありません。大切なのは、一定の期間にわたって継続して摂ることです。忘れた日があっても、翌日から続ければ構いません。ただし、忘れた分をまとめて飲むのは避けてください。1日の上限量に近づく可能性があります。飲み忘れが続く場合は、歯磨きや朝食といった毎日必ず行う習慣と組み合わせると続きやすくなります。置き場所を目に入る場所に変えるだけでも効果があります。

Q 食事だけで400マイクログラムを摂ることはできませんか?

食事摂取基準では、この400マイクログラムについて「通常の食品以外の食品から」と指定されています。つまり、食事とは別にサプリメントなどから摂ることが想定されています。理由のひとつは、食品に含まれる葉酸と、サプリメントに含まれる形の葉酸とでは、体内での利用のされ方が異なるとされているためです。もうひとつは、葉酸が加熱や水に弱く、調理の過程で失われやすいためです。食事を整えることは大前提としたうえで、それに加えてサプリメントを使うと考えてください。

Q 高価な葉酸サプリのほうが効果がありますか?

価格と効果は比例しません。確認すべきは、1日あたりの葉酸の量が基準に沿っているか、成分表示が明確か、そして飲み続けられるかです。高価な製品には他の成分が多く含まれていることがありますが、それが必要かどうかは人によります。むしろ、他のサプリメントとの併用で成分が重複するリスクが上がります。まずは葉酸の量が明記された、続けやすい製品から始めてください。不足が心配な栄養素があるなら、受診の際に相談するほうが確実です。

Q 妊活をやめた場合、葉酸も飲むのをやめてよいですか?

サプリメントからの400マイクログラムという目安は、妊娠を計画している方や妊娠の可能性がある方に向けたものです。その状況でなくなったのであれば、続ける必然性は下がります。ただし、葉酸そのものは日常的に必要な栄養素であり、食事からの推奨量である1日240マイクログラムは引き続き意識する価値があります。やめる場合も、食事を整えることは続けてください。また、再び妊娠を考えるようになったときは、その時点から摂り始めれば構いません。

Q 葉酸を摂っていれば安心、と考えてよいですか?

そうではありません。食事摂取基準に書かれているのは「リスクの低減」であり、摂取していれば必ず防げるという意味ではありません。また、葉酸は妊娠しやすさを高めるものとして位置づけられているわけでもありません。妊活という観点では、排卵が起きているか、周期が安定しているか、必要な検査を受けているかといった点のほうが直接的に効きます。葉酸は「やっておいたほうがよいことのひとつ」であって、それだけで十分というものではありません。食事、睡眠、体重、そして必要なら受診。全体のバランスのなかで位置づけてください。

まとめ|数値で判断する

葉酸については、感覚ではなく数値で判断できます。食事からの推奨量は15歳以降で1日240マイクログラム。そして妊娠を計画している女性などは、通常の食品以外の食品から1日400マイクログラムを摂ることが望まれるとされています。

始める時期は、妊娠が分かってからではなく妊娠を考え始めたときです。もっとも必要とされる時期は、妊娠に気づく前にあたることがあるためです。

一方で、上限もあります。サプリメントなどからの葉酸は、30歳から64歳で1日1,000マイクログラム、その他の年齢では900マイクログラムが耐容上限量とされています。複数のサプリメントを重ねている方は、合計量を確認してください。そして、サプリメントは食事の代わりにはなりません。食事を整えたうえで、足りない分を補うという順番を守ってください。