妊活を始めると、記録することが増えます。月経の日付、基礎体温、排卵検査薬の結果、体調。これらを紙で管理するのは大変で、多くの方がアプリを使うことになります。
ただ、アプリを入れただけでは役に立ちません。何を記録するか、予測をどこまで信じるか、受診にどう活かすか。この3つを押さえて初めて、道具として機能します。
記録すべきは月経の日付、基礎体温、排卵検査薬の結果、おりものの状態、体調のメモの5つです。アプリの予測機能は、あくまで過去の記録からの推定であり、その周期に実際に排卵が起こる日を示すものではありません。予測を信じ切らず、検査薬や基礎体温で確かめる姿勢が必要です。
なぜアプリを使うのか
紙の表でも記録はできます。それでもアプリが選ばれる理由は3つあります。
グラフが自動で描かれる
基礎体温は、数値の羅列を見ても意味がつかめません。グラフの形として見て初めて、二相になっているかが分かります。手書きでグラフを描く作業が省けるのは、続けるうえで大きな差になります。
複数の情報をひとつにまとめられる
月経の日付、体温、検査薬の結果、体調。これらを別々に管理していると、あとから照らし合わせるのが大変です。同じ画面で並べて見られることに価値があります。
過去の周期と比べられる
妊活で本当に役立つのは、1周期の記録ではなく複数周期の傾向です。周期の長さのばらつき、高温期の長さ、陽性が出る時期。過去と比べられる形で残っていることが重要です。
記録すべき5つの項目
何を記録するかを絞っておくと、続けやすくなります。
1|月経の開始日と終了日
もっとも基本になる情報です。開始日だけでも周期の長さは分かりますが、終了日も入れておくと月経期間の変化にも気づけます。
2|基礎体温
毎朝の数値です。測り忘れた日は空欄で構いません。穴が空いていてもグラフの形はつかめます。
3|排卵検査薬の結果
陽性か陰性かだけでなく、判定の濃さがどう変化したかも残しておくと、次の周期に活かせます。何日目に検査したかも一緒に記録してください。
4|おりものの状態
透明で伸びる状態になった日を記録しておくと、排卵の時期の目安になります。道具が要らず、毎日確認できる情報です。
5|体調・服薬・通院のメモ
風邪をひいた、睡眠が極端に短かった、飲酒した。こうしたメモがあると、基礎体温が乱れた理由があとで分かります。通院した日や処方された薬も残しておくと、受診のときに役立ちます。
予測機能をどこまで信じるか
ここが、この記事でもっとも伝えたい部分です。
予測は「過去からの推定」でしかない
アプリが示す次の月経日や排卵日は、これまでの記録をもとに計算した推定値です。その周期に実際に何が起きるかを見ているわけではありません。体調や生活の変化で、実際の排卵はずれます。
周期が不規則なほど予測は当たらない
周期が安定している方であれば、予測はある程度あてになります。しかし、周期にばらつきがある方の場合、予測と実際が大きくずれることは珍しくありません。
予測は「検査を始める日の目安」として使う
もっとも実用的な使い方はこれです。予測された排卵日そのものを狙うのではなく、その数日前から排卵検査薬を使い始める合図として使うのです。予測はきっかけ、判断は検査薬と基礎体温。この役割分担にしてください。
「アプリの予測日に合わせたのに妊娠しない」という相談は少なくありません。予測はあくまで推定です。実際に排卵が起きたかどうかは、基礎体温の上昇で事後に確認するしかありません。予測と実際のずれを毎周期記録していくと、自分の場合にどのくらいずれるかが見えてきます。
アプリの選び方
数多くありますが、見るべき点は絞れます。
基礎体温をグラフで表示できるか
数値の一覧しか出ないものでは、二相性の判断ができません。グラフ表示があることは必須と考えてください。
複数周期を並べて見られるか
1周期ずつしか表示できないものより、過去の周期と比べられるもののほうが役立ちます。
データを外に出せるか
受診のときに医師へ見せる場面を考えると、印刷できる、あるいは画像として保存できる機能があると便利です。画面を見せるだけでも構いませんが、印刷したものを渡せると話が早くなります。
広告や通知が邪魔にならないか
毎朝使うものです。起きてすぐの時間に広告が大きく表示される、通知が頻繁に来るといったものは、続けるうえでストレスになります。
データを引き継げるか
数年にわたって記録することもあります。機種変更のときにデータを移せるか、必ず確認してください。数年ぶんの記録を失うのは、想像以上に痛手です。
記録がたまったら、何を読み取るか
入力するだけで終わらせず、3周期ごとに見返してください。読み取るポイントは4つです。
1|周期の長さのばらつき
毎回何日だったかを並べてみてください。ばらつきが数日程度に収まっているのか、10日以上動いているのか。ここで、自分の周期が読みやすいかどうかが分かります。
2|高温期の長さ
体温が上がってから月経が始まるまでの日数です。おおむね14日前後が目安とされます。極端に短い状態が続く場合は、受診の材料になります。
3|陽性が出る時期
排卵検査薬の陽性が、周期の何日目に出たか。これが数周期ぶんそろうと、次の周期で検査を始める日を絞り込めます。検査薬の消費を減らすうえで、いちばん効く情報です。
4|予測と実際のずれ
アプリの予測日と、実際に陽性が出た日、体温が上がった日。この3つのずれを見ておくと、予測をどのくらい割り引いて受け取ればよいかが分かります。
この4点を確認するだけで、次の周期の動き方が具体的になります。記録は貯めることではなく、読むことに意味があります。
扱う情報の性質を知っておく
妊活アプリに入れる情報は、きわめて個人的なものです。
何が記録されているかを把握する
月経の日付、体温、性交渉の有無、通院の記録。これらがどこに保存され、どう扱われるのかは、利用規約やプライバシーの説明に書かれています。すべてを読む必要はありませんが、どこに保存されるかだけは確認しておいてください。
端末のロックをかける
もっとも現実的な対策です。スマートフォンにロックをかけ、必要ならアプリ自体にもロックをかけられるものを選んでください。
共有機能の扱いに注意する
パートナーと記録を共有できる機能を持つアプリがあります。便利な反面、共有の設定を確認せずに使うと、意図しない相手に見えてしまうこともあります。設定を一度は確認してください。
受診に活かす
アプリの記録がいちばん力を発揮するのが、受診の場面です。
口頭の説明より正確に伝わる
「周期がだいたい不順で」と言うより、数か月ぶんのグラフを見せるほうが、状況は正確に伝わります。診察の時間は限られていますので、見せるだけで伝わる材料があることには大きな意味があります。
持っていく形を決めておく
画面を見せるのか、印刷して渡すのか。医療機関によっては、画面を見せる形で問題ないところもあれば、印刷を求められることもあります。初診の予約をするときに確認しておくと安心です。
3周期ぶんあれば十分
完璧な記録を何年分もそろえる必要はありません。3周期ぶんの記録があれば、傾向を読む材料としては足ります。
アプリに振り回されないために
便利な道具ですが、使い方を誤ると負担になります。よくある落とし穴を挙げておきます。
毎日開いて一喜一憂しない
予測日までのカウントダウンを何度も確認する、判定の結果を何度も見返す。こうした行動が習慣になると、気持ちが消耗します。入力したら閉じるくらいの距離感が、長く続けるうえでは適切です。
他人の記録と比べない
アプリによっては、他の利用者の傾向が表示されることがあります。参考程度にとどめてください。周期の長さも高温期の長さも個人差があり、平均から外れていることが問題を意味するわけではありません。
入力できない日があっても続ける
数日入力しなかったからといって、それまでの記録が無駄になるわけではありません。空白があってもグラフの形はつかめます。「途切れたからやめる」がいちばんもったいない選択です。
アプリで完結させようとしない
アプリはあくまで記録の道具です。周期が乱れている、陽性が出ない、体温が上がらない。こうした状態が続くとき、答えはアプリのなかにはありません。記録を持って受診してください。
よくある質問
排卵検査薬のほうです。アプリの予測は過去の記録からの推定にすぎませんが、排卵検査薬はその周期に実際に起きているホルモンの変化を見ています。ずれた場合は、実際の体の反応である検査薬を優先してください。そして、ずれた事実そのものを記録に残しておいてください。何周期か続けると、自分の場合に予測がどのくらいずれるかの傾向が見えてきます。その傾向が分かれば、次からは予測日を基準に「何日前から検査を始めるか」を調整できます。
記録が目的になってしまうと、消耗します。対策としては、記録する項目を減らすことです。5項目すべてを毎日入れる必要はありません。まず月経の日付だけは残す。これだけでも周期の長さは分かります。余裕があるときに基礎体温を足す、という進め方で構いません。また、毎周期きっちり記録しなければならないわけでもありません。休む周期を作っても、記録が完全に途切れるわけではありません。妊活は長く続くことがあります。続けられる形にすることのほうが、完璧さより優先されます。
基本的な記録の機能は、無料のものでも十分そろっています。有料になると、広告が表示されない、記録できる項目が増える、データの書き出しができる、といった違いが出てくることが多いようです。まずは無料で始めて、続けられそうなら必要な機能に応じて検討すればよいと思います。選ぶ基準は価格ではなく、毎朝使うときに負担にならないかどうかです。広告の表示が邪魔で続かなくなるくらいなら、有料に切り替える価値はあります。
まったく問題ありません。手入力でも数十秒で終わります。連携機能は手間を減らすためのもので、記録の質が変わるわけではありません。まずは手入力で1〜2周期試してみて、その作業が負担だと感じたら連携できる体温計を検討する、という順番で十分です。アプリを先に決めて、そのアプリに合う体温計を後から選ぶほうが、無駄がありません。逆に、体温計を先に買ってしまうと、使いたいアプリと連携できないということが起こります。
続けられるほうです。紙には、一覧性が高く、受診のときにそのまま渡せるという利点があります。アプリには、グラフが自動で描かれる、過去と比べやすい、複数の情報をまとめられるという利点があります。どちらか一方に決める必要もありません。普段はアプリに入力し、受診の前に印刷して持っていくという組み合わせが、実際にはいちばん使いやすいという方が多いようです。大切なのは形式ではなく、3周期ぶんの記録が手元にある状態を作ることです。
まとめ|予測はきっかけ、判断は自分の体
妊活アプリに記録すべきは、月経の日付、基礎体温、排卵検査薬の結果、おりものの状態、そして体調のメモの5つです。すべてを完璧に入れる必要はありません。まず月経の日付だけでも、周期の長さが分かります。
そして、予測機能は過去の記録からの推定にすぎません。その周期に実際に排卵が起こる日を示すものではありません。予測は排卵検査薬を使い始める日の目安として使い、判断は検査薬と基礎体温で行う。この役割分担を守ってください。
アプリを選ぶときは、グラフ表示があるか、過去の周期と比べられるか、データを外に出せるか、そして毎朝使って負担にならないかを見てください。記録が3周期ぶんたまったら、受診の材料として持っていくことができます。