妊活を始めようと思ったとき、多くの人が最初に手をつけるのが基礎体温です。ただ、正しく測れていない、あるいはグラフの読み方が分からないまま続けている方は少なくありません。
この記事では、基礎体温の測り方と、グラフをどう読むかを整理します。そして同じくらい大切なこととして、基礎体温で分かることと分からないことの線引きもはっきりさせます。この線引きを知らないと、必要のない不安を抱えることになります。
基礎体温は婦人体温計を使い、朝目が覚めたら起き上がる前に、舌の下で測ります。低温期と高温期の差がおおむね0.3度以上あれば二相性とされ、排卵が起きていると推測できます。ただし基礎体温だけで排卵日をピンポイントに特定することはできません。傾向をつかむための道具だと考えてください。
基礎体温とは何か
基礎体温とは、体がもっとも安静な状態にあるときの体温です。具体的には、朝目が覚めて、まだ体を動かしていない状態で測った体温を指します。
なぜ女性の体温が周期的に変わるのか
排卵が起きると、卵巣に残った卵胞が黄体という組織に変わり、黄体ホルモンを分泌します。この黄体ホルモンには体温を上げる働きがあるため、排卵後は体温がやや高い状態が続きます。この期間が高温期です。
高温期はおおむね14日ほど続き、妊娠が成立しなければ黄体の働きが終わって体温が下がり、月経が始まります。この繰り返しが、グラフの上では低温期と高温期の二相として現れます。
だから「二相性かどうか」が目安になる
黄体ホルモンは排卵があって初めて分泌されます。つまり、グラフが二相に分かれていれば、排卵が起きた可能性が高いと考えられます。逆に、ずっと低温のままで高温期が現れない場合は、排卵が起きていない可能性を疑う材料になります。
正しい測り方
基礎体温は、平熱の測り方とはまったく違います。ここを間違えていると、いくら続けても意味のあるグラフになりません。
1|婦人体温計を使う
普通の体温計では、必要な精度が足りません。基礎体温の変化は0.3度から0.5度程度の幅で起こるため、小数点以下2桁まで測れる婦人体温計が必要です。
2|起き上がる前に測る
少し動いただけでも体温は上がります。寝返りを打つ、トイレに立つ、体を起こす。これらをする前に測ってください。前の晩に、枕元の手の届く場所に体温計を置いておくのが基本です。
3|舌の下で測る
わきの下ではなく、口の中で測ります。舌の裏側の付け根に体温計の先を当て、口を閉じて測ります。舌の裏側は体の深部の温度に近く、わずかな変化を捉えやすいためです。
4|できるだけ同じ時刻に
時刻が日によって大きくずれると、比べにくくなります。とはいえ、神経質になる必要はありません。多少ずれた日は、その旨をメモに残しておけば十分です。
測り忘れた日、体調を崩した日、夜勤明けの日。数値が飛んだり抜けたりしても構いません。基礎体温は1日単位で判断するものではなく、周期全体の形を見るものです。完璧を目指すと続かなくなります。続けることのほうがはるかに重要です。
グラフの読み方
1〜2周期ぶん記録できたら、グラフの形を見てみてください。
二相性かどうか
低温期の平均と高温期の平均を比べて、おおむね0.3度以上の差があれば二相性とされます。多くの場合、体温の高低差は0.3度から0.5度程度の範囲に収まります。
どこからが高温期か、は厳密には決められない
ここが誤解されやすい点です。グラフを見て「どこからが高温期なのか分からない」と悩む方が多いのですが、基礎体温は1日単位で境目を判定できるほど正確な検査ではありません。日ごとの数値はギザギザして当然です。
実際、二相に分かれていないと心配して受診された方のグラフを専門医が見ると、二相と判断できることがほとんどだと言われています。自分で判断がつかないときは、グラフを持って婦人科で見てもらうのがいちばん確実です。
高温期の長さも見る
高温期がおおむね14日前後続いているかどうかも、ひとつの目安になります。極端に短い、あるいは高温期がはっきりしない状態が続く場合は、受診を検討する材料になります。
基礎体温で分からないこと
ここが、この記事でもっともお伝えしたい部分です。
排卵日のピンポイント特定はできない
基礎体温は「排卵が起きたらしい」ことを事後に示すものです。体温が上がったときには、すでに排卵は終わっています。したがって、基礎体温だけを見て「今日が排卵日だ」と判断することはできません。
実際、体温が下がる日や低温期の最終日と実際の排卵日が一致する割合は高くないことが報告されており、現在では排卵日を予測する目的で基礎体温だけを使う場面は少なくなっています。
妊娠しているかどうかも分からない
高温期が長く続くと妊娠を期待したくなりますが、基礎体温では判定できません。妊娠しているかどうかは、妊娠検査薬や医療機関での検査で確認する必要があります。
では、なぜ測るのか
それでも基礎体温に価値があるのは、次の3点が見えるからです。
- 排卵が起きているらしいかどうか
- 自分の周期がどのくらいの長さか
- 高温期がどのくらい続いているか
そして、これらは受診したときに医師へ渡せる客観的な記録になります。「なんとなく周期が不順で」と口で説明するより、数か月分のグラフを見せるほうが、話は格段に早く進みます。
他の方法と組み合わせる
基礎体温の弱点は、排卵日を事前に予測できないことです。この弱点は、他の方法を重ねることで補えます。
排卵検査薬
尿中のホルモンの変化を捉えるもので、排卵の数日前から直前を知る手がかりになります。基礎体温が事後、排卵検査薬が事前。この2つは役割が違うため、組み合わせると精度が上がります。
おりもの(頸管粘液)の観察
排卵が近づくと、おりものの状態が変化します。透明で伸びる状態になるのが目安です。道具が要らず、毎日確認できるのが利点です。
医療機関での超音波検査
もっとも確実なのが、婦人科で卵胞の育ち方を見てもらう方法です。受診の手間はかかりますが、実際の排卵の時期をかなりの精度で知ることができます。
基礎体温で周期の全体像をつかみ、その情報をもとに排卵検査薬を使う時期を決める。この組み合わせが、自宅でできる範囲ではもっとも実用的です。
続けるための工夫
基礎体温でいちばん難しいのは、続けることです。工夫を4つ挙げます。
枕元に固定の置き場所を作る
手を伸ばせば届く場所に、必ず同じ位置で置いてください。探す動作をした時点で、もう体温は上がり始めます。
アプリで記録する
紙の表に書き写す作業が負担になって続かなくなる方は多くいます。アプリに数値を入力すればグラフが自動で描かれるものを使うと、続けやすくなります。体温計とアプリが連携するものもあります。
抜けた日は気にしない
1日測り忘れても、グラフの形はほとんど変わりません。「昨日測れなかったからもういいや」となるのがいちばんもったいないパターンです。
まず3か月を目標にする
1周期だけでは、自分の傾向が見えません。3周期ぶんそろうと、周期の長さのばらつきや高温期の長さが見えてきます。まずは3か月を目標にしてください。
よく見かけるグラフの形
グラフの形にはいくつかの典型的な傾向があります。あくまで目安として、自分のグラフと見比べてみてください。
低温期と高温期がはっきり分かれている
もっとも分かりやすい形です。低温期が続いたあと、数日のうちに体温が上がり、高温期が2週間ほど続いて下がる。この形であれば、排卵が起きていると考えてよい状態です。
高温期への移行がゆるやか
数日かけて少しずつ上がっていく形です。この場合も二相性であることに変わりはありません。上がり方の急さで良し悪しが決まるわけではありません。
高温期が短い
高温期が10日に満たない状態が続く場合は、一度受診して相談する材料になります。ただし、1周期だけを見て判断はできません。数周期の傾向で見てください。
高温期が現れない
低温のまま推移して高温期がはっきり現れない場合、排卵が起きていない可能性があります。ただし、測り方が正しくない、時刻がばらばら、といった理由でそう見えることもあります。測り方を確認したうえで、数周期続けても同じであれば受診してください。
周期が長い・短い
周期の長さには個人差があり、一般的な範囲から少し外れていても問題ないこともあります。ただし極端に長い、短い、あるいは毎周期ばらつきが大きい場合は、背景に治療が必要な状態があることもあります。
こんなときは受診を
グラフを見ていて、次のような状態が続く場合は、婦人科でグラフを見てもらってください。
- 数周期にわたって高温期がまったく現れない
- 高温期が極端に短い状態が続く
- 周期が極端に長い、または短い状態が続く
- 月経が3か月以上来ていない
- 月経のたびに日常生活に支障が出るほどの痛みがある
- 不正な出血が続く
これらは、治療が必要な状態が背景にあることもあります。自己判断で様子を見続けるより、記録を持って一度受診するほうが確実です。グラフという客観的な材料があるだけで、診察はずっとスムーズになります。
よくある質問
基礎体温のグラフは、そもそもきれいな階段状にはなりません。測る時刻のずれ、前夜の睡眠、部屋の気温、体調。さまざまな要因で日ごとの数値は上下します。大切なのは1日ごとの数値ではなく、周期全体をならして見たときに低温の期間と高温の期間に分かれているかです。自分では判断がつかないことのほうが普通ですので、数周期ぶんのグラフを持って婦人科で見てもらってください。実際、二相性がないと心配して受診された方の多くが、専門医の目では二相と判断されています。
勤務が不規則な場合、厳密な基礎体温を測るのは難しくなります。それでも、まったく測らないより意味はあります。工夫としては、「まとまった睡眠のあと、目が覚めたとき」を基準にする方法があります。朝でなくても、その日いちばん長く眠ったあとに測り、勤務の状況をメモに添えておくのです。そのうえで、グラフを見せるときに勤務が不規則であることを医師に伝えてください。読み方を調整して判断してもらえます。また、基礎体温以外の方法、たとえば排卵検査薬やおりものの観察のほうが、生活のリズムに左右されにくいという利点があります。
体温が上がったときには、すでに排卵は終わっている可能性が高くなります。したがって、基礎体温の上昇を合図に動くのでは遅いことが多いのです。基礎体温は「次の周期の計画を立てるための材料」として使ってください。何周期か記録すると、自分の周期のどのあたりで体温が上がるかの傾向がつかめます。その傾向をもとに、次の周期では排卵検査薬を使い始める日を決める。この使い方であれば、事前の予測に活かせます。
発熱があった日は、基礎体温としては参考になりません。記録は残しておいて構いませんが、グラフを読むときは「体調不良」とメモを添えて、その日を除いて考えてください。同じように、飲酒した翌日、睡眠時間が極端に短かった日、測る時刻が大きくずれた日も、数値が動きやすくなります。メモを添えておくと、あとでグラフを見返したときに理由が分かります。アプリの多くには、体調やメモを記録する欄がありますので活用してください。
まとめ|傾向をつかむ道具として使う
基礎体温は、婦人体温計を使い、朝目が覚めたら起き上がる前に、舌の下で測ります。1〜2周期ぶん記録して、低温期と高温期の差がおおむね0.3度以上あれば二相性とされ、排卵が起きていると推測できます。
ただし、基礎体温だけで排卵日をピンポイントに特定することはできません。体温が上がったときには排卵は終わっています。妊娠しているかどうかも分かりません。この限界を知らずに使うと、必要のない不安を抱えることになります。
基礎体温の本当の価値は、周期のリズムを知ること、そして受診したときに医師へ渡せる客観的な記録になることです。排卵日を事前に狙うなら、排卵検査薬やおりものの観察を組み合わせてください。まずは3か月、完璧を目指さずに続けてみてください。